最高気温23℃。初夏のような強い日差しが照りつけている。今から7回が始まろうとしている。現在、3対2で日本ハムが勝っている。
今日は宮城出身、岸孝之のコボパ初登板日。加えて、来場者全員へのブラックユニ配布日だった。チケットは前売りで完売、もう2月の時点でほとんど埋まっていたらしい。急きょ立見席も売られたが、それも即座に完売した。今年一番の客入りだろう。ちなみに岸の楽天初登板日(4月9日ビジター)の宮城県のTV視聴率は23%だったらしい。
その注目の岸だが苦しいピッチングだった。5回で100球を投げた。2本の本塁打で3点を先制された。そして、6回で降板した。今は、楽天がその点差を1点ずつ追いかけている。
残された攻撃は3回。1点もとられたくない。7回表のマウンドに福山があがる。
先頭打者は大野。追い込むもライト前にヒットを打たれる。大野は今シーズンわずか1安打だったが、この試合、ホームランを含む猛打賞だ。
続く中島卓也にバントを決められ1死2塁。
そして、今日誕生日の西川に打席が回る。外野が前に出てくる。内野の間を抜ける打球は絶対に本塁に返さない。
1球目インハイのストレート、2球目外角のスライダー、3球目高めのストレート、全て簡単に見逃す。バットがピクリとも動かない。追い込んだものの何を狙っているのか。失投は許されない。そして、4球目、インコース高めのストレート。西川はこれをカットする。窮屈な動き。狙いと違うようだ。そして、5球目、外角のツーシーム。またしても西川のバットが動く。しかし、体勢は崩れている、三振。福山の勝ちだ。続く石井一成も打ち取った。
7回裏は宮西が登板した。日本ハムの勝ちパターン。そして、藤田、嶋、茂木、ペゲーロと左が多い場面で出してきた。
楽天としては厳しい回だ。だが、日本ハム側にも一つ懸念があったのだ。宮西に3人で抑えてほしいが、そうすると8回の裏はペゲーロから始まる。だが、宮西は回跨ぎをほとんどしない。今シーズン好調のペゲーロだが、対左の打率.167と極端に悪い。この回ペゲーロまで回すのか、回るのかが一つ試合結果を変える一つの要因になりそうだった。しかし、楽天の攻撃は3人で終わった。これで8回裏が一つの見所になりそうになった。
8回表は高梨が出てきた。左の近藤、右のレアードと続く打順。1発も駄目なので、ワンポイントだろう。ただ、この近藤は現在首位打者のうえ、目下出塁率.590と絶好調。高梨の力を図るには格好の相手だ。近藤が高梨の投球にどう反応するか。これは、今シーズン高梨の一つの指標になりえる。結果、近藤はインコースのスライダーを見逃し三振。しかも、少し、足を引いていた。大分、打ちにくそうな動きをしている。高梨は今後も使えそうだ。
そして、菅原が登場。腕の振りが良い投手だ。レアードは空振り三振。その後、満塁になるも無失点。力で抑えられそうないい球筋だ。最後は浮く球も多くて、コントロールはまだ改善中だが、すぐにセットアッパーとして使える投手に成長しそうだ。
そして、注目の8回裏。マウンドには石川直也。プロまだ10試合目の若い選手だ。
さあ、ペゲーロ、ウイーラー、アマダ―と続く打線。レフトへの強い風が吹いている。右打者には絶好の風だ。ペゲーロは風を物ともしないパワーがある。
さあ、いくぞ。ペゲーロが打席に入る。しかし、結果はアウト。
そして、ウイーラー、アマダ―。ウイーラーは開幕から不調だが今日は2安打。守備もよいプレーを出している。アマダ―はタイムリーを打っている。石川直也はフォークとストレートを主体にした投手で力はあるが、コントロールは若干アバウトなところがある。加えて、この風だ。1発が出てもおかしくない。というより、この試合一の1発が出そうな場面だ。日本ハムはレフトにフライを打たせたくない。ゴロか三振を狙いたい。そんななか早速、ウイーラーがレフト方向に大きな当たりを打った。ポール際に打球が飛ぶ。球場がざわついた。しかしファール。結局、2人とも出塁したがホームランは出なかった。そして、無得点に終わった。
9回表は森原が抑えて、いよいよ9回裏。マウンドにはWBC戦士の増井だ。
先頭の藤田がでて、嶋が送って1死2塁。打者は茂木。外野が前に出てくる。内野の間を抜いても同点にはできなそうだ。だが、繋ぐしかない。茂木が増井の球を見る。しかし、今日の増井は力んでいた。ストレートは入らず、フォークはたたきつける。カーブは浮く。連敗中のプレッシャーだろうか。長年、リリーフをしていて似たような場面は何度も経験しているはずだが安定しない。楽天ペースの試合を止められない。
結果、茂木は四球。そして、ペゲーロだ。サヨナラのランナーが出たので、外野は下がる。サヨナラの1塁ランナーは絶対に返さないシフトだ。そして、このシフトが功を奏し、ペゲーロをセンターライナーに打ち取る。2死。あとひとつだ。そして、ウイーラーに回る。ここまで打点0のウイーラー。今まで何度となくチャンスで凡退してきた。スタンドからもこの試合いちの大きな声援が聞こえる。「あふれるパワー、見せつけろ闘志、戦うのさ、いざ逞しく、ぶっ飛ばせ、さあ、ウイーラー!ハイハイハイハイ!」全員がウイーラーになんとかしてほしいと祈っていた。球場だけでなくテレビの前でも祈っていた。そして、ウイーラーが打った。つまりながらもセンター前に。同点。内野も総立ちだ。全員がウイーラーをたたえる。今まで苦しみながらもチームを盛り上げてきたウイーラーが今シーズン初めて主役になった。球場は割れんばかりの声援と興奮に包まれていた。ウイーラーの満面の笑みにベンチの盛り上がり。ずっとベンチの端で立って試合を見守っていた岸も笑みを浮かべていた。さきほど交代してベンチにいた藤田は興奮しすぎて1mくらい飛んでいた。テンションは最高潮だ。
10回表は松井裕樹。延長になったらいい投手からだしていく。
松井はなんなく抑えて、10回裏。
早速、松井はベンチ前でキャッチボールを始めた。次の回も行きそうだ。3連投中の守護神。回跨ぎはさせたくない。酷使気味のリリーフ陣を少しでも休ませたい。何とかここで決めたい。
先頭の銀次は倒れて1死。マウンドには鍵谷。そして、次の島内がヒットで出塁する。何とかこの回で決めてほしい。次の岡島にランナーを進めてほしい。粘ってなんとかしてほしい岡島。しかし岡島は粘らなかった。粘ろうにもストライクがはいらないのだ。一度もバットを振ることなくフォアボールを選んだ。そして、代打聖沢。去年、調子が良かったのに出場機会に恵まれずFA移籍してもおかしくない状況だった。だが、イーグルス愛で残留した。みんなが喜んだ。しかし、今年も調子がいいのに他選手との兼ね合いでなかなかスタメンになれなかった。だが、ファンは聖沢の調子がいいことを知っていた。球場は歓声につつまれる。聖沢なら、なんとかしてくれるはずだ。カウント2-2になる。緊張感が溢れる。そして、次の球。聖沢のバットがボールを捉えた。打った瞬間、ヒットとわかる当たりだ。サヨナラの打球が右中間を転がっていった。島内がサヨナラのホームを踏み、聖沢を中心に歓喜の輪が広がった。球場の声援のボルテージが最高潮に達した。